世界は今

飲み込まれていく日々(1)

26Dec 2013 張 慧霞
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張慧霞(Zhang Hui Xia)

中国湖北省 武漢大学・日本語教師

2012年 長崎県立大学シーボルト校研修員

長崎滞在期間 2012年4月~2012年3月

 

 

 

 

  玉蘭(木蓮)の並木が町を彩る時、武漢に帰ってきた。まだ人参と羊肉の煮込みスープで体を温めたい寒さだった。家に着くと、食卓に定番の蓮根スープが出されてある。水果湖の市場で買ってきた蓮根で、毎週日曜日息子の塾送迎のついでに買っていると主人が言う。

 

 

 

 月曜日に早速学部の雑務を手伝い、火曜日から講義を始めた。地下鉄工事や道路整備のため大学の正門が位置を変え、バスの運行路線も変わったということは帰国までにすでにインターネットのニュースで知っていた。しかし、家の近くのメインストリートにある大学行きのバス停が一時的に廃止されて、行きも帰りも40分以上歩かなければならないということは予想外だった。

 

 

 

 『私達はまだ日本語の初心者だから日中2ヶ国語講義は辛い』という学生の不満の声を思い出しながら、本来ならバス停につながっているが、今はガードフェンスに遮断されている横断歩道を見て、こっちが愚痴を言いたかった。『地下鉄なんて自分には全く関係ないのに、なぜこうして工事の不便を我慢しなきゃいけないのか』と。

 

 

 

バス停から眺めた武漢大学の西門

 

 

 

 文句を言ってもしょうがない。商店街を通り抜けたところのバス停なら乗り換え1回で家の近くまで行けるし、ついでに商店街で便利な文房具を見つけたり、翌朝の食材探しをしてもいいなと思うとすっかり散策気分になり、長時間の歩行も苦にはならなかった。

 

 

 

 大学の正門を出たところに、学生らしい若者が露店を出してテルテル坊主型の風鈴を売っている。息子のお友達へのプレゼントとして買っておこう。それをかばんにおさめて商店街へ向かっていると、長崎に留学予定の子にばったり会った。あさって出発だから今晩この近くで送別会があるという。一年生の時の顔を鮮明に覚えていたせいか、この子たちも大人になったねと密かにつぶやいた。

 

 

 

テルテル坊主型の風鈴

 

 

 

 首義路(shou yi lu)でバスを降りて市場へ向かって歩いていたら、パイナップルの香りがしてきた。果物屋のお兄さんが皮を剥いている。もうパイナップルの季節か。一つ買おう。その店は家族で経営していて、お父さんが仕入れ、お母さんが接客、息子達が皮むきなど果物の下処理をそれぞれ担当している。パイナップルはまず皮を削ぎ落してから、ピンセットみたいな道具でトゲを一つずつきれいにとっていく。皮むき器が変わったねと私が言うと、その若者はトゲに沿って螺旋(らせん)状に切りとっていく方法より、今のほうが無駄が少ないと答えてくれた。パイナップルとはこうした処理を経て食べるものなのだという先入観があったので、長崎にいた頃、県立大学の食堂や住吉のスーパーでいちょう切りになっていて、たまに胡麻粒のような種や花が入っているものを見たとき、このまま食べて大丈夫かしらと心配していた。日本の友達に見せたいから写真を撮ってもよいかと尋ねたら快く応じてくれた。こっち側から撮ったほうがきれいに写るよというアドバイスも受けながらカメラに収めた。サトウキビも慈姑もまだあるね、桑の実も登場してきたわ、と興味津々になったが、あまり騒いではみっともないから次回買うことにした。

 

 

 

「このピンセットを使うと無駄が少ないよ」と果物屋のお兄さん。

 

 

 

慈姑も皮を剥いてくれる

 

 

 

桑の実も店頭に並ぶ

 

 

 

 

(前半終わり)